増備が進むと次第に本来の用途とは性格が異なる路線にも本形式が投入されるようになった。1962年の投入候補路線には駅間距離が長めの常磐線(平均速度52.8km/h)や京阪神緩行線(同56.7km/h)も含まれていたが、本形式の仕様決定に関してはこれらの路線を除いた4線区での平均駅間距離(1.34km)や平均速度が参考になった。駅間距離の長い路線ではMT46A形主電動機の界磁を40%から35%にする措置が必要であり、MT55形が35%まで界磁を弱めているのはこのためである。

当時の国鉄は多くの路線の最高速度が95km/hに定められており、80km/h以上の高速域では101系よりも加速力が高かったので特に大きな問題にはなっていなかった。しかし快速電車から逃げ切るために高加速と高速性能を求めていた大阪鉄道管理局には京阪神緩行線の新性能化の際関西支社として本形式で良いか新形式を用意するかの検討をさせている。大阪鉄道管理局では当時の線路使用方法(快速と緩行の内側線のみの集中)が改善されるなら新形式でなくても101系や本形式でも十分対応できるとの認識を示した。

35%まで界磁を弱めて高速性能を改善したが、定格速度は30km/h台であることから駅間距離が平均2km台の京浜東北線に1965年から投入する際には以下の案も検討された。

ノッチオフの速度が上がったのに伴い歯車比を1:5.6にする。
MT54形主電動機により中速以上の特性を高めた通勤電車の可能性を模索。

しかしいずれも本形式より電力消費量が増加するデメリットが大きく高速運転区間でも本形式の経済性が高く、無理に高速タイプにする必用はないと結論が出た。これにの調査結果から1967末から常磐線に投入された際にはブレーキ初速と使用頻度が高くなることもあり新規開発されたメンテナンスフリーのディスクブレーキ付きTR212形付随台車を採用した。

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